思春期特発性側彎症(Adolescent Idiopathic Scoliosis, AIS)は、原因不明とされる脊柱の側方への湾曲で、10歳前後から思春期にかけて発症することが多い疾患です。
保存療法(手術を行わない治療)の中でも、特に注目されているのが「シュロスベストプラクティス(Schroth Best Practice, SBP)」という運動療法です。
シュロスベストプラクティス(Schroth Best Practice)とは?
ドイツ発祥のシュロス法(Schroth Method)をベースに、最新の運動学的知見や臨床結果を取り入れて改良されたプログラムです。
シュロス法は1920年代にカタリーナ・シュロスによって開発された側彎症に特化した運動療法で、SBPはその進化版です。
保存療法としての目的
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脊柱の湾曲の進行を抑制する
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姿勢の改善
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肺活量・呼吸機能の改善
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筋バランスの正常化
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痛みや心理的負担の軽減
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将来的な手術の回避
シュロスベストプラクティスの特徴
1. 3次元的な脊柱の調整
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側湾症は「側方変位」「回旋」「前後カーブ」の3D変形です。
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SBPでは、体の立体的な歪みに対して立位・座位・歩行時などに適した補正運動を行います。
2. 個別のカーブパターンに合わせた運動
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カーブの種類(例:右胸側湾、左腰側湾など)によって運動メニューがオーダーメイドされます。
3. 軸伸長(Axial Elongation)
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脊柱を縦方向に引き伸ばすような動きで、湾曲の圧縮を軽減し、歪みを改善します。
4. 呼吸を用いたリモデリング
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呼吸によって、特に凹側の肋骨を広げる「ローテーショナル・アングレイト・ブリージング(Rotational Angular Breathing)」という技術を使い、胸郭と姿勢のリモデリングを促進します。
5. 日常生活での自己補正(ADLの再教育)
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座り方、立ち方、歩き方など、日常生活の中で自分で補正姿勢を取れるように訓練します。
適応対象
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軽度から中等度のAIS患者(Cobb角10〜40度程度)
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成長期の子どもで、進行リスクがある場合
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装具療法(ゲンシンゲン・ブレース)と併用するケースも多い
期待される効果
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側彎の進行抑制・停止
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見た目の非対称性の改善(肩・骨盤の高さ差など)
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手術の回避
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精神的安心感の向上(自分で管理できる感覚)
特徴 | 説明 |
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起源 | ドイツのシュロス法に基づく |
アプローチ | 3次元の姿勢補正・呼吸・日常動作 |
目的 | 側彎の進行抑制・見た目の改善・手術回避 |
対象 | 軽度〜中等度のAIS、特に成長期の子ども |
実施方法 | 専門家指導の下、自宅でも継続可能な運動 |
注意点
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SBPは専門トレーニングを受けた施術者の指導の下で行う必要があります。
★当院院長の山中はSBP公認セラピストです★ -
誤った運動や自己流では逆に悪化のリスクもあります。
★プログラムを覚えてからも、定期的に癖や間違いを修正しに来院されることをお勧めします★ -
装具(ブレース)と並行して行うことで、より効果的とされます。
★25度を超える側弯には、シュロス法の装具(ゲンシンゲンブレース)のご紹介も可能です。 - 日本ではまだ未認可で、外科手術だけでなく保存療法も浸透していくことが期待されます。現時点では残念ながら健康保険対象外となります。